DTMでのオーケストラ音源の打ち込みは、当然ながら奥が深くて、調べているなかで頻繁に登場して、必要になってくるのが「ダイナミクス操作(CC1)」。
マウスで音符を並べただけでは出せない、あの生楽器のグッとくる生命感。その秘密は、手元のフェーダー(モジュレーションホイール)にあるようです。
今回は、「なんか機械っぽくなってしまう…」と感じているかたにも参考になる、劇的にリアルさが変わるダイナミクス操作の理論やコツついてにいろいろとお話ししてみたいと思います。
なぜオーケストラ制作にフェーダー(CC1)が必要なのか?
マウスでポチポチと音符を打ち込んだだけのオーケストラが、情緒に欠けたり、無機質っぽく聴こえたことがあった場合に、オーケストラ制作(DTM)する上で踏まえておきたいことがあります。
ピアノは鍵盤を叩けば「ターン!」と綺麗な音が鳴ってくれますが、ヴァイオリンなどの弦楽器やフルートなどの管楽器は、「音が鳴っている間」も常に変化し続けていることです。
具体的に、フェーダー(CC1)を使い、音に変化を加えることで得られるメリットと理由を3つお話ししたいと思います。
1. 人間の「息遣い」や「ボウイング(弓の動き)」の再現
弦楽器や管楽器の音を再現するときは、フェーダーを使うことで、実際の演奏者が息を吹き込んだり、弓に力を込めたりするような有機的で滑らかな変化(ダイナミクス)を、直感的に音源に吹き込むことができます。
2. マウスでは不可能な「同時操作」と「時間短縮」
マウスで1点ずつ音量線(オートメーション)を描いたり、また、時間をかけたくないという場合はフェーダーを使うことで、曲を再生しながら音楽のグルーヴに合わせて一発でリアルな動きを録音もできます。
そして、左手でフェーダーを動かしながら、右手で鍵盤を弾くといった同時演奏(リアルタイム・レコーディング)も可能です。
3. 感覚的なニュアンスの表現
音楽の強弱は「数値」ではなく「感情」や「ノリ」。画面を見ながら数値を入力したり、音を聴きながら指先でフェーダーを押し引きしながら、人間の音楽的な感性をそのままDAWに反映していきます。
その人間の「息遣い」や「弓の動き」といった有機的なニュアンスを吹き込むために欠かせないのが、フェーダーやモジュレーションホイールによるダイナミクス(CC1)になります。

フェーダー1本で同時に変わる「3つの要素」
「CC1(コントロールチェンジ1番)」って聞くと難しそうに聞こえますが、現代の優れたオーケストラ音源では、このフェーダー1本を動かすだけで、オーケストラ音源の内部では3つの要素が同時に変化しています。
- 音量(ボリューム):シンプルに音が大きくなったり小さくなったりします。
- 音色(明るさ・倍音):ここがポイント!弱く弾くと柔らかくこもった音になり、強く弾くと鋭く張り詰めた音色に変化します。
- ビブラート(深さ):感情が高まってグッと音が強くなるとき、音源側が自動でビブラートを深くかけてくれます。
つまり、フェーダーを動かすだけで、音の大きさだけでなく「表情」そのものをコントロールできるというわけですね。
リアルさを極めるダイナミクス(CC1)の「3つのコツ」
実際にフェーダーを触るとき、私が意識して「ここは大事だな」と感じている3つのコツをお話します。
① 出だしはゆっくり(フェードイン)
音の始まり(発音)の瞬間からガッツリ最大値で鳴らすのではなく、低めの位置からスタートして、じわっと持ち上げるのがコツです。これだけで、弦がこすれるリアルなアタック感が生まれます。
② フレーズの山を意識する
メロディの中で一番盛り上がるところや最高音に向けてフェーダーを押し込み、フレーズの終わりに向かってはスッと力を抜いていきます。歌心を感じさせる一番大切なポイントです。
③ 一瞬も静止させない
一番やりがちなのが、ロングトーン(伸ばす音)でフェーダーをピタッと止めてしまうこと。これだと途端に「機械的な、物足りなさ」が出てしまいます。手元をほんの少し、常にわずかに揺らすこと。これが生の息吹を感じさせる最大の隠し味だと実感しています。
実践では「もう1本のフェーダー(CC11)」も組み合わせる
ダイナミクスをコントロールする「3つ同時変化」のフェーダー(CC1)だけでもかなりリアルになりますが、音源によっては、もう1本、CC11(エクスプレッション:純粋な音量のみのフェーダー)を組み合わせて操作します。
理由としては、CC1だけで音を小さくしようとすると、音が消えかかる手前で「音がこもりすぎて不自然」になることがあるからです。
- CC1(モジュレーション): 音色やビブラートの「感情の激しさ」を変えるために使う(メイン)
- CC11(エクスプレッション): 音色のニュアンスは保ったまま、曲のフェードアウトや、他の楽器との音量バランスを微調整するために使う(サブ)
結果として、左手で2本のフェーダー(CC1とCC11)を同時に、あるいは交互に動かすことで、まるで本物の指揮者や演奏者のような、極限までリアルな表現が可能になります。
MIDIキーボードではどう操作するの?
MIDIキーボードの鍵盤の横にある2つの「ホイール(コントローラー)」のうちのひとつ、ピッチベンドは音程が変わるため、この操作には使えません。
実際には、そのとなりにあるモジュレーション・ホイールをダイナミクスと連動して動かしながら録音するだけで、リアルなオーケストラ演奏が作れるようになります。
そこで「エクスプレッション CC11(純粋な音量)」はどうするの?と疑問に思うのですが、方法としては、
- まずはホイール(CC1)だけで演奏を録音する(これで音量・音色・ビブラートの基本の表情がつきます)。
- あとから修正したい部分や、完全に音を消したい(フェードアウトしたい)部分だけ、画面上でCC11(エクスプレッション)の線をマウスで書き足す。
この方法で、演奏の気持ちいいニュアンスはキーボードのホイールで生々しく表現しつつ、細かい音量調整だけを後からパソコンで綺麗に仕上げることができます。
さらに上級者となると、ダイナミクスとエクスプレッションを操作する専用のフェーダーを別に用意することで、リアルタイムで音をコントロールできますが、はじめは、上記の方法で十分表情豊かにDTM録音できると思います。
まとめ
今回は、オーケストラ音源に命を吹き込むダイナミクス操作の基本についてお話ししてみました。ひと口にDTMでオーケストラの音を表現すると言っても、とても奥深い世界です。
ですが、それを理解して作った音は、人間による演奏や録音とわからないくらいの仕上がりになると思います。
みなさんは、オーケストラを打ち込むときに「ここはこだわっている!」というポイントや、苦労しているところはありましたら、ぜひ下のコメント欄で教えてもらえると嬉しいです。最後までご覧いただきありがとうございました。
次回はAbleton liveを使って、演奏後にエクスプレッションをコントロール、上書き録音する方法についてお話します。もしよかったら、こちらの記事もご覧ください。

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